マンション大規模修繕の費用相場・平均額と推移データ
「相場」とひとことで言っても、1回目・2回目・3回目以上では分布そのものが違います。この記事は国交省の実態調査データを、比較しやすい形に組み直したものです。
大規模修繕の見積もりを受け取ったとき、まず知りたいのは「この金額は高いのか安いのか」です。この記事では相場を1つの数字ではなく、回数別の分布として示します。中央値だけでなく四分位(下位25%〜上位25%の幅)まで見ることで、自分のマンションがどのあたりに位置するかを判断しやすくします。
この記事の工事金額は、国交省の実態調査における定義(報告書4ページ)に基づきます。直接工事費(共通仮設費を含まない)+諸経費①(現場管理費・一般管理費・法定福利費等)+諸経費②(大規模修繕瑕疵保険の保険料)の合計で、消費税相当額は含みません。見積書を比べるときも、この3項目がそれぞれ入っているかを確認する材料になります。
回数別の工事金額(中央値・四分位)
国交省の実態調査(配布814社・回収200社・集計対象818件)から、大規模修繕工事の回数別に工事金額を四分位で整理した表です。
| 工事回数 | 下位25% | 中央値 | 上位25% | 平均値 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目(n=332) | 4,943.8万円 | 8,665.0万円 | 19,825.0万円 | 15,237.4万円 |
| 2回目(n=194) | 4,858.5万円 | 7,660.0万円 | 13,806.8万円 | 11,702.7万円 |
| 3回目以上(n=242) | 5,753.0万円 | 8,703.0万円 | 16,785.0万円 | 14,758.6万円 |
出典国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(報告書13ページ・四分位表)
中央値だけを見ると、2回目がいったん下がり、3回目以上で再び上がっています。回数が増えるほど単純に高くなるわけではありません。また、どの回数でも上位25%は下位25%の3〜4倍あり、幅が大きいことも読み取れます。この幅の大きさ自体が、「建物の規模・工事範囲によって金額が大きく変わる」ことの裏付けです。
戸あたり・床面積あたりで比較する
工事金額そのものは建物の規模に強く左右されるため、戸あたり・床面積あたりに直すと自分のマンションと比較しやすくなります。
| 工事回数 | 下位25% | 中央値 | 上位25% |
|---|---|---|---|
| 戸あたり・1回目(n=331) | 90.9万円 | 110.2万円 | 134.0万円 |
| 戸あたり・2回目(n=194) | 87.8万円 | 106.1万円 | 129.8万円 |
| 戸あたり・3回目以上(n=242) | 76.8万円 | 97.0万円 | 125.7万円 |
| 床面積あたり・1回目(n=297) | 0.9万円/㎡ | 1.1万円/㎡ | 1.4万円/㎡ |
| 床面積あたり・2回目(n=181) | 1.1万円/㎡ | 1.3万円/㎡ | 1.6万円/㎡ |
| 床面積あたり・3回目以上(n=155) | 0.9万円/㎡ | 1.2万円/㎡ | 1.7万円/㎡ |
戸あたりで見ると、回数が増えるごとに中央値はゆるやかに下がっています。一方で床面積あたりは2回目・3回目以上でやや上がる傾向です。この2つの指標が逆方向に動いているのは、回数を重ねるほど1戸あたりの専有面積が大きい建物の比率が集計に混ざっている可能性がありますが、報告書はその要因分析までは行っていません。
防水工の労務単価は15年でどう動いたか
工事金額そのものは工事範囲によって大きく変わりますが、単価の土台になる労務費は公開データで長期の推移を追えます。防水工の公共工事設計労務単価(47都道府県平均)は、2012年度から2026年度の15年間で約2倍になっています。
出典国土交通省「公共工事設計労務単価」(防水工・47都道府県平均、編集部算出)(各年度公表値の単純平均。全15年度分は労務単価データベースで確認できます)
同じ工法・同じ面積でも、15年前の相場感をそのまま今の見積もりに当てはめると割高に見えてしまいます。見積もりを評価するときは、当時の記事や経験ではなく、直近の単価を基準にすることが大切です。
このデータをもっと詳しく見る
この記事で示した数値は、サイト内のデータベースページでさらに詳しく確認できます。
- 大規模修繕の実態データ(回数別の詳細・円グラフ含む) — この記事の工事区分別の内訳まで見られます
- 防水工の労務単価データベース(都道府県別・年度別) — 15年度・47都道府県すべての単価を確認できます
よくある質問
うちのマンションの見積もりが中央値より高いのですが、問題がありますか。
この記事の数値は分布の目安であり、個別の見積もりの適正・不適正を判定するものではありません。建物の規模・築年数・工事範囲によって金額は変わるため、まずは戸あたり・床面積あたりの金額で自分のマンションの条件に近い区分と比べ、差が大きい場合は見積書の数量・単価の内訳を確認する材料にしてください。
なぜ1回目より2回目の工事金額の中央値が低いのですか。
国交省の実態調査データでは、1回目の中央値が8,665万円、2回目が7,660万円、3回目以上が8,703万円となっており、単純に回数が増えるほど高くなるわけではありません。調査対象となった建物の規模や工事範囲の違いが影響している可能性がありますが、原因を特定した分析は報告書に記載がなく、この記事でも断定はしません。
防水工事だけの費用相場を知りたい場合はどうすればよいですか。
この記事のデータは大規模修繕工事全体の金額です。防水工事に絞った工法別の費用相場は、国交省データと複数の公開情報を横断集計したデータベースページで確認できます。
LIMITS この記事で扱えない範囲
- この記事の工事金額データは、防水工事に限らず大規模修繕工事全体(建築系・仮設・設備系工事等を含む)の集計です。防水工事だけを取り出した金額ではありません。
- 令和3年度(2021年度)の労務単価は、47都道府県中29都道府県で標本数が少ないための参考値(原本PDFで山括弧表記)を含みます。他の年度に比べて参考値の割合が高い年として見てください。
- 中央値・四分位は集計対象の分布であり、個別のマンションの見積もり金額が適正かどうかを判定するものではありません。
書けることだけを並べても判断は早くなりません。この記事が扱えない範囲を先に示しています。
参照した資料
資料国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(配布814社・回収200社・集計対象818件(2026-08-09確認))
資料国土交通省「公共工事設計労務単価」(平成24年度〜令和8年度の47都道府県別単価を編集部が集計)
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